人は家庭や会社、地域コミュニティなど、人が集まる場所に所属すると、何かしらの自分の役割を演じることがあります。
ありのままの自分でいられず、役割を演じないといけない、という思い込みが強ければ強いほど、現実の生活でも心理的な問題を作り出すことが増えていきます。
本日は、「しっかり者のいい人」を演じている女性のケースについてお話しします。
しっかり者さんが抱えるイライラ
会社員のFさん(30代女性)は、仕事でストレスを溜めていました。
Fさんの部署に移動してきた後輩の教育を担当することになったものの、その後輩の仕事覚えが悪く、仕事が進まないのです。
本人はやる気がないわけでも、さぼっているわけでもないのに、Fさんの望むペースでできず、どこでつまづいているのかもわからない、といった状況でした。
そもそも、その後輩はFさんが業務過多のため、Fさんの業務量を減らすために異動してきました。
しかし、Fさんは自分の業務が忙しいために必要最小限の引き継ぎで済ませたいと思っているのに、後輩の仕事の覚えが悪く、結局Fさんが後輩のやりかけの仕事を引き取って仕上げる、ということを続けていました。
後輩が思うように仕事ができない時に、Fさんはいつも感じる思いがありました。
「まったく、私がいないとダメなんだから!」
私がいないとダメなんだから!という使命感
ふと思い返してみれば、Fさんが
「私がいないとダメなんだから!」
と思う対象はその後輩だけではなく、頼りにならない同僚、仕事をしたがらない同僚、すぐFさんを頼ってくる後輩など、あらゆるところにいることに気付きました。
Fさんの周りには
「Fさんがいないとダメ」
「Fさんを頼りにしている」
という人たちがたくさんいたのです。
このため、Fさんはいつも「全く、しょうがないんだから」と思いながらも周囲の同僚や後輩の面倒を見ていました。
Fさんのように、周囲の人たちはできない人ばかりで、自分がいないとダメだ、と感じている人は意外と多いものです。
Fさんのように文句を言いながらも人の面倒を見てしまう人には、こんな傾向が見られます
・両親が忙しく、役に立つ子を演じなければいけなかった
・長男・長女で、弟や妹の面倒を見なければならなかった
・病弱な兄弟がいて、自分は両親の手のかからない子でいた
こういった環境に育つと、子供は両親の役に立つように、両親の手をかけないように、「しっかり者で、手のかからないいい子」の役割を引き受けて生きていく傾向が強いんですね。
これはひとえに親のためです。
こうして親に迷惑をかけず、親の望む「いい子」でい続けることで、子供は本当はこう思っています。
「いい子にしてるから、私のことを見て。私を愛して」
でも、皮肉なことに「いい子」は手がかからないので、親は「この子は見ていなくても安心ね」と、ますます親の視線が自分に向かなくなってしまうんです。
このため、子供は
「お父さん、お母さん、私のことも見て!!私を認めて!!」
と思いながら役に立つ子であり続けてしまうんですね。
そして、大人になっても人の世話をし続けながら「見てもらえない感」を胸の中に燻り続けさせるのです。
いい子の役割を降りて、自分らしくいるためには
このように「いい子」「いい人」の役割を背負っている人は、まず、役に立たない自分でも、人の世話をしない自分でも、ちゃんと価値がある、と自分で自分自身を認めてあげることが大切です。
人の世話をしなくても、役に立たなくても、ありのままの自分でその場にいていい、と腑に落としていくことで、過剰に人の面倒を見たり、イライラしながら人のをする、ということが段々減っていきます。
そして、場合によっては周囲の人は実は自分が思う程仕事ができないわけではない、という気付きが得られたりもします。
そんな風に周りの見え方や、自分のあり方が変わってくると、人間関係が劇的に変わる、といったことも起こったりするんですね。
でも、「役に立たない自分には価値がない」という思いが根強いと、なかなか「いい子」「いい人」の役割を手放すことができず、人のお世話を焼くことをやめることができません。
そんな時はプロの手を借りて、自分の心の中で何が起こっているか見ていくことも有効ではないかと思います。
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